移住して20年、振り返ってみると、正直「後悔した」と言えることはひとつもありません。大変だったことや、想定外だったことはもちろんありますが、それも含めて移住という経験の『面白さ』だったと感じています。今回は、良い/悪いの二択ではなく、20年住んでわかった「うれしい発見」と「意外な発見」を、率直にお伝えします。
うれしい発見① 水と食べ物のうまさ
まず驚かされたのは、水道水のおいしさでした。神奈川の水道水とは明らかに違う味がします。引っ越し時に持ってきたお米を同じ炊飯器で炊いて食べたとき、家族みんなが「うまい!」と声に出してしまったくらい。他の食べ物も同様で、魚介や野菜が新鮮でおいしく、なかにはゴッコ(ホテイウオ)のように、こちらに来て初めて知った珍しい食材もあります。春には子持ちニシン、夏から秋にかけては大きなホタテやタコ、冬の前にはシャケと、季節ごとの旬を味わえるのも、暮らしはじめて実感したうれしい発見でした。スーパーの魚売り場に並ぶ顔ぶれが季節ごとに入れ替わるのを見るだけでも、暮らしのリズムが変わったことを実感します。日々の食卓が、移住してから確実に豊かになりました。
うれしい発見② 自然が近い暮らし
少し外に目を向けるだけで、キツツキやリスといった、天然記念物クラスの生き物に日常的に出会えることも、大きなうれしい発見でした。庭先や近所の公園で、こうした生き物を当たり前のように見かける暮らしは、神奈川にいたころには想像もしていませんでした。特別な場所に出かけなくても、日常の延長線上に自然があるという感覚は、住んでみるまで実感できないものだったと思います。
うれしい発見③ 物価の安さと「不便さ」が心地よい理由
物価の安さも、暮らしてみて実感したうれしい発見のひとつです。そしてもうひとつ、意外だったのは、交通の便の悪さです。地下鉄の駅から離れた場所に住むと、車がないと身動きが取りづらい場面も出てきます。最初は不便に感じるだろうと思っていたのですが、実際に暮らしてみると、この「適度な不自由さ」がむしろ心地よいことに気づきました。何でもすぐに手に入る便利さから距離を置きたい、という移住の目的そのものに、思いがけず合致していたのです。
意外な発見① 雪と宅配便のコストに驚いた
雪の大変さは、覚悟していたつもりでも、実際に体感すると想像以上でした。雪かき、除雪、冬道の運転。毎年のこととはいえ、体力的にも時間的にも、それなりの負担があります。以前の記事で触れた融雪剤による車の傷みなど、住んでみて初めて分かる細かい苦労も少なくありません。
もうひとつ想定外だったのが、宅配便の送料の高さです。わかっていたつもりですが、本州の家族や友人に荷物を送るたびに、距離を実感します。逆に本州から送られてくる荷物にも同じことが言えるわけで、本州との距離を、こういう形で実感することになるとは思っていませんでした。旅行の行き来なら気にならない距離感も、日々の物流という角度から見ると、また違った意味を持ってくるものです。
意外な発見② ヒグマと隣り合わせという、自然の近さの裏側
「うれしい発見②」で触れた「自然が近い暮らし」には、実は裏側もあります。ヒグマが身近にいる、という現実です。ニュースで出没情報を目にするたびに、自然の豊かさと隣り合わせで暮らしているのだと、あらためて実感させられます。息子が小学生だったころは、登下校のルートに注意を払うこともありました。とはいえ、それも含めての北海道なのだと、今では自然に受け止められるようになっています。うれしい発見と意外な発見は、こうして表裏一体になっていることが多いのだと思います。
意外な発見③ 気候と街の変化に気づいた
移住した当初と比べると、最近は暑い日が増えてきたように感じます。これは北海道に限った話ではないのでしょうが、「北海道は涼しい」という当初のイメージとのギャップに、気づかされることが増えました。毎年お盆時期を過ぎるとテレビではスタッドレスタイヤのCMがいっせいにはじまります。これも風物詩のひとつですね。
また、街を歩く人のペースがゆったりしていることは、最初はうれしい発見のひとつでした。せかせかした都会の空気から離れたくて移住したのですから、当然といえば当然です。ただ年月を重ねるうちに、高齢化が目立ってきたことにも気づくようになりました。近所を歩いていても、20年前とは顔ぶれが変わってきています。ゆったりとした空気の背景に、こうした街の変化があることも、住み続けてはじめて見えてきたことです。
まとめ
うれしい発見と意外な発見は、実はいつも表裏一体でした。自然が近いことはうれしい発見であると同時に、ヒグマという意外な発見でもある。交通の不便さは、意外だったはずが、いつのまにかうれしい発見に変わっていた。もし移住前の自分に何かひとつ伝えられるとしたら、「良い/悪いで仕分けようとしなくていい」ということだと思います。20年住んでみて言えるのは、「良かった」も「意外だった」も、区別なくすべてが移住という経験を面白くしてくれる材料だったということです。次回は、これから移住を考える方に向けて、最初にやっておきたい自己診断についてお伝えします。

