「移住、ちょっと気になってるんだよね」。まだその程度の本気度でも、まったく問題ありません。むしろ、その段階だからこそやっておきたいことがあります。SNSやニュースで地方移住の話題を見かけるたびに気になってしまう、けれど本気で調べるところまではいっていない。そんな方に向けて書いています。今回は、気候や仕事、住まいといった「情報」を集めはじめる前に、自分自身に向けて問いたい3つのことをお伝えします。
移住は「情報」より先に「自分」を知ることから
移住を考えはじめると、つい気候や物件、仕事の情報から集めたくなります。もちろんそれも大切ですが、私自身を振り返ると、情報よりも先に整理しておいてよかったと思うことがあります。それが、WHY(なぜ移住したいのか)、WHAT(移住で何を得たいのか)、HOW(どうやって実現するのか)という3つの問いです。この順番で自分に問いかけると、後から入ってくる情報の受け止め方が変わってきます。同じ情報でも、WHYやWHATが定まっているかどうかで、必要な情報か、単に不安をあおるだけの情報かを見分けやすくなるからです。逆に、この3つを整理しないまま情報だけを集めてしまうと、他人の移住理由や成功例に振り回されて、いつのまにか自分の気持ちが置き去りになってしまうこともあります。順番に見ていきます。
WHY『なぜ移住したいのか』
私の場合、そもそものきっかけは出張でした。仕事で札幌を訪れるうちに、気づけば「ここで暮らすのもいいかもしれない」という気持ちが芽生えていました。壮大な決意があったわけではなく、むしろ好奇心に近いものだったと思います。その気持ちに気づいてから実際に移住を決めるまで、約1年ほど自分の中で温め続けていました。焦って結論を出さず、何度も自分に問い直す時間があったからこそ、今でも「あのとき決めてよかった」と思えているのだと思います。WHYは、立派な理由である必要はありません。「なんとなく気になる」も、れっきとしたWHYです。大事なのは、その気持ちに正直になって、一度言葉にしてみることだと思います。
WHAT『移住で何を得たいのか』
WHATは、移住によって自分が何を手に入れたいのか、という問いです。私の場合、自然の近さやゆったりした時間の流れを求めていた自覚はありましたが、実際に暮らしてみると、想定していなかった発見もたくさんありました。水や食べ物のおいしさのように、うれしい誤算もあれば、ヒグマや雪のように、意外だったこともあります。これは以前の記事でも詳しくお伝えしました。今振り返ると、当時の自分がWHATとして挙げていたのは「せかせかした都会から離れたい」というシンプルな一言でした。それだけでも十分で、細かい条件は住んでみてから見えてくるものも多いというのが実感です。WHATは移住前に完璧に言語化できなくても構いません。ただ、「今、何を求めているか」を一度考えてみることで、情報の集め方や優先順位が自然と見えてきます。
HOW『どうやって実現するのか』
WHYとWHATがぼんやりとでも見えてくると、次に気になるのが「どうやって実現するのか」というHOWです。仕事はどうするか、住まいはどう探すか、子どもの学校は、費用はどれくらいかかるのか。考えはじめるときりがなく、検索すればするほど不安な情報も目に入ってきて、動き出す前に疲れてしまうことも少なくありません。私自身も、移住を決めてから実際に引っ越すまでの約1年間、HOWにまつわる情報には何度も頭を悩ませました。ここは具体的な情報や準備が必要になる部分ですが、実は一番最初に考える必要はありません。HOWで焦ってしまうと、WHYやWHATが置き去りになり、情報に振り回されてしまいがちです。まずは「どうやって実現するのか」という問いが自分の中にあることを認識するだけで十分です。具体的な進め方については、あらためて詳しくお伝えする機会を用意していますので、今は焦らず、問いの存在を確認するだけにしておきましょう。
まとめ
移住はまず情報から、と思いがちですが、その前にWHY・WHAT・HOWという3つの問いに、正直に向き合ってみることをおすすめします。答えが曖昧なままでも構いませんし、時間が経てば答えが変わっていってもかまいません。実際、私自身のWHATも、移住してからの20年でずいぶん変化してきました。焦らず、今の自分の気持ちを言葉にしてみることが、案外いちばんの近道だったりします。次回は、この3つの問いを一枚にまとめた簡単なチェックシートをご紹介します。難しく考えず、思いついたことをそのまま書き込んでもらえれば十分な、気軽に使えるものです。もう少し本気度が高まってきた方に向けた、具体的な一歩の踏み出し方については、その次の記事でお伝えします。

